道場長の柔術コラム Vol.5
「エスケープこそ、柔術の真髄」
柔術を学ぶと、どうしても「極め技」に憧れがちです。アームバーやチョーク、華やかなサブミッションは見る人を惹きつけます。
しかし、私が道場で一番大切にしているのは「エスケープ」です。
なぜなら、柔術は“負けない武道”だからです。
たとえ相手に上を取られ、マウントやサイドで押さえ込まれても、呼吸を整え、冷静にスペースを作り、脱出する。逃げる力を持っていれば、試合は終わりません。逆にエスケープがなければ、すぐに極められてしまう。
私自身、国際大会で強豪と対戦したとき、何度もこのエスケープに救われてきました。
逃げ切ることができれば、試合時間の中でチャンスは必ず訪れます。耐え抜いた先に逆転の一瞬が生まれる。その経験から、「逃げる力こそ生き残る力」だと強く実感しています。
そしてこれは、柔術だけの話ではありません。
人生でも同じです。苦しい状況に置かれたとき、真正面からぶつかるだけではなく、一度落ち着き、体勢を整え直し、抜け出す道を探す。逃げることは恥ではなく、次につなげるための戦略です。
カルペディエム新潟では、初心者の方にもまず「エスケープの習得」を推奨しています。守る力があってこそ、攻めの柔術が輝くのです。